2022.03.31

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新年度のスタートになんとなく「不安」を感じてるあなたへ。#てる子のお悩み相談ルーム

は〜い皆さん、ごきげんよう!満島てる子です。春の訪れとともに、新年度ってやつがやってきましたね。

読者の方々は、この春光の候、いかがお過ごしなのかしら? なぁんて、ビジネスメールの書き出しみたいな文言を使ってしまったけれど。笑 おそらく新入社員になるというひともいれば、この春を頃合いに転職した方、職場復帰をするぞと一念発起した方もいたりするのかなぁ。同じところにいても新体制の編成ってのがあったり、何かとそわそわするものですよね。

変化の季節です。そんな中で、仕事に向かっていく気持ちを保つのって、 どうしてなかなか簡単なことじゃないのよね。メンタルの調律がうまくいかないときも出てくるはず。今回ご紹介するお手紙には、その濃淡に差はあれど、この時期にきっと多くの人が味わうだろう苦悩がよく表われているような気がします。見てみましょう。

今回寄せられたお悩み「ネガティブで心配性な私。背中を押してほしいです」

この投稿をもらったのは、年明けしばらくしてのこと。なので、内容から察するに、現在相談者さんはもうすでに復職した後なの……かな?今は元気にお過ごしだといいんだけれど……。時間差での回答、どうぞお許しください。

それにしても、こころのバランスって、本当に思いもよらないきっかけで、いとも簡単に崩れちゃうものよね。そのときの人間関係に、仕事・学業での負荷。突然のアクシデントが引き金となったり、ささいな体調の変化が影響することも。「ずっとなんともなかったのに」と、本人にとっても周りにとっても予想外の場合だってあることでしょう。

相談者さんも、もしかしたらそのパターンだったりしたのかしら。お手紙の中に書いてくれているように「色々なことが重な」ったりすると、どれだけ「もともと明るい性格」だったとしても、こころの中にある「ネガティブで心配性」な側面がどんどん大きくなっちゃうものよね。暗い気持ちのかたまりがぬるっと表に出てきて、”もうひとりの自分”かのごとく振る舞いはじめるというか。なんならそいつが大暴れして、本人の精神をこなごなに砕いちゃうときも……。

これがとっても厄介で、自分のこころのはずなのに自分でコントロールできないし、しかも傷つくのも自分。相談者さんと同じかどうかはわからないけれど、あたしは昔、そんな”もうひとりの自分”にメンタルをこてんぱんにされて、2年近いお休み期間に突入せざるをえなかったことがありました。

いやぁ〜あの頃はしんどかったなぁ。なにかしたいことがあったとしても、それに注ぐエネルギーがこれっぽっちも湧いてこないの。というか、全部マイナスかつ内向きのベクトルに変わっちゃうのよね。親しい仲であっても人に会えば「迷惑をかけているかも」、やらなきゃいけないことに取り組もうとすれば「それ以前に生きる資格が僕にはない」。いちいち負の思考に取り憑かれたようになっていたわ。

そんな状況から、様々きっかけを経てどうにかこうにか這い出し(カウンセリングに通ったのいい思い出。女装をはじめたのもそんなきっかけの中のひとつでした)、今となってはそれとなく生きていくのにも慣れたあたしですが。やっぱり「社会復帰」的なことを始めた当初は、今回の投稿と似たところがあって、世渡りへの不安感やらメンタルの微細な動きにともなう倦怠感やら、焦る気持ちだっていっぱいだったし、だれかのサポートがほしいと切に願っていたのを覚えています。

昔のことではあるけれど、でも当時の感覚を振り返るだけでなんだか、具のない味噌汁を無理やり飲まされているようなぼやぼやっとしたしんどさが……(ってこんな例えで通じるんかしら?笑)。思い出のレベルですらこうなんです。もしこれが目の前の問題であったとしたなら、きっと相当大変。

投稿を締めくくる「背中を押していただけませんか」という言葉からは、目下こころのチューニングに向き合っているかもしれない相談者さんの、そんな現在の大変さも感じられるような気がして、「あたしにできることは少ないかもしれないけれど、応援してあげたいなぁ……!」と、そう切に思ったのでした。

あたしなりのAnswer

とはいえこういう場面で勢いに任せて「大丈夫!職場復帰なんて余裕よ!あんたならできる!」と、楽天的なだけで無責任なことは言いたくないし、言えない性分(変に頑固でごめんなさい!笑)。だから、ちょっと相談者さんの望むものとは違ってしまうかもしれないので、ここからは「おいおい、どうやらこれがてる子なりのエールのつもりらしいぞ」と、書いてあることをなまあたたかく受け止めてもらえればと思うのですが……。笑

まず、これは言わせてください。
どうかお仕事、がんばらないでください。

「え?」と思ったかもしれません。「なに言っとんじゃい!」というツッコミも、各方面からめっちゃ来そう。笑
でもあたし、これ割と本気で言ってるの。

自分自身、よく反省するのですが……。
人って「これやらなきゃ!」というのが目の前にぶら下げられた時、えてしてそこに変に夢中になってしまうというか、それだけを見つめるようになってしまう傾向がある気がします。しかも、そうやって何かに邁進していく姿勢って、この世の中では「一生懸命」だとか、「熱心」「エネルギッシュ」といったプラスの価値をつけられていることが多いように思うんです。

そして、そんな「先に進んでいる感」が出ているアクティブな様が、仕事であれプライベートであれ、明るく前向きなものとして歓迎されがち。活発で闊達で、広い交友を持ち、なにかをしている・できているという様が、この社会では人間の理想像としてライトアップされる傾向にあるのよねぇ。

でもさぁ、人間だれしも、そんなにポジティブにばかり生きていられないじゃない?
馬力が出ないときもあるし、元気に振る舞えないときだってある。不安や心配をなにも抱えていない状況なんてあんまり考えられないし、逆にあったらそれはそれで怖いはずなんです(ひねくれすぎかしら……笑)。

なのに、どこかに日が当たればそこに影ができるように、理想にそぐわない姿勢や状況は「消極的でよくない」と、たいてい否定的にあつかわれるもの。
だからこそ、闇落ちした”もうひとりの自分”が現れたとき、その存在をすんなり受け入れられる人は少なくて、むしろかなりの方がその付き合いに困ってしまうんだと思います。

それなら、いっそのこと。
ネガティブな自分について「こんなのよくない」と苦しむことになる前に、「こうすべき」「こうあるべき」っていう理想のカセから逃れて、力半分・気持ち半分でいいから、ゆったり仕事や目の前の諸々と向き合ってみるのもアリなんじゃないかしら。
陰陽どちらの側面も己として飲み込んで、無理せず日常をサバイブする。 それが実は、この世の中を生きていくにあたっては、すごく大事な気がするんです。

だから、そんな気楽なスタンスへの第一歩として、相談者さんにはぜひ仕事をがんばらないでもらいたい。というか、生きることをがんばらないでほしい。
ネガティブで心配性なのだって本当はちっとも悪いことじゃないはずなのに、「ポジティブで元気にいなきゃ!がんばらなきゃ!」という、誰しもこころに抱きがちな謎の同調圧力のせいで、そんな自分がマイナスに見えちゃっているんだと思うの。

でも。
いつも明るくなんていなくていい。暗くてじめじめしててもいい
ひとまず生きてさえいれば、それだけでまるもうけじゃない?
あたしはそう思います。

なめくじのように生きる」を普段からモットーにしているせいで(このモットー、文字に起こすとなんかひどい!笑)、今回はそんな自分のこだわり全開のアドバイスになってしまいましたが……。笑 どうかこれからの人生のいろんなことに、するっとぬるっと、腹八分目ぐらいの消化感で向き合ってみてはいかがでしょうか。
きっと気持ちが軽くなると思いますよ。

相談者さんを後ろからどーん‼‼とプッシュできる内容ではなかったかもしれないけれど、せめてこの文章がふんわりとした追い風ぐらいにはなってくれますようにと、画面の向こうからそう願っています。

ま・と・め♡

いやはやなんだか、今回は生きていく方向性だなんていう、ちょっとばかし大きい話にまで、自然と話題が広がってしまったわ。笑
でも1月とはまた違った意味で、1年のスタート感があるこの時期。これからのあり方について考える機会も自然と増えてくるもんなのかしらね。
おいしいものでも食べたりして自分自身のご機嫌も取りながら、ゆるゆるっとこの世の大波小波を乗りこなしていきたいものよね。みんなで生き残るわよん!笑
それでは皆さん、Sitakkeね〜!

***
文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:なべ子(Sitakke編集部)
***

満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。) 2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。

てる子のお悩み相談ルーム・過去記事
https://sitakke.jp/tag/10/

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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