2022.01.28

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「生活にアートは欠かせない」札幌円山の古民家で紡がれるオリビエさんの暮らし

札幌でふと目に留まる昔ながらの建物に、ホッとする瞬間があります。「まだあったんだ」と古き良き街並みが大切に守られているような気がして。

札幌市中央区の円山で古民家を改装して暮らすフランス人のOlivier Silva(オリビエ・シルバ)さん(61)。フランス・パリで生まれ、1984年に単身で日本に移住しました。「生活にアートは欠かせない」と語るオリビエさんの豊かな暮らしについてうかがいます。

森の中に佇む<円山の台所>で愉しむフランスの家庭料理とアート

「え、まさかここに...?」札幌円山の住宅街にあるちょっと怪しげな一本の細道。その道を抜けた先に広がる川や木々の豊かな自然の中に、オリビエさんの自宅兼アトリエ「円山の台所」があります。

古民家の一階は広々とした空間に改装され、ミッドセンチュリーの家具や雑貨品の他、芸術家だったオリビエさんの両親の作品がリビングに飾られています。澄んだ空気と森の中で、オリビエさんの豊かな感性が表現された空間にうっとりして、つい札幌に居ることを忘れてしまいそう。

オリビエさんは東京での勤務を経て、2006年に札幌へ移住。現在は、料理教室でフランスの家庭料理を教えています。

ー料理教室ではどんな料理を教えているんですか?

オリビエ:フランスの家庭料理を教えているよ。パテドカンパーニュや伝統的な煮込み料理、スイーツなど、時期に応じてレッスンで作る料理はさまざま。特に人気のレッスンは、サラミ作りです。色んな部位の肉を混ぜて腸詰して、1ヶ月半ほど発酵させます。白カビのサラミはワインとの相性がいいんです。日本では馴染みがなくてあまり売ってないので、北海道で手に入る食材でオリジナルレシピを作りました。

古民家の玄関を改装して、サラミの発酵室に。

料理には感性が現れるものです。オリビエさんの料理や器、調理道具を見ていると、食とアートの融合を感じます。心と身体の状態に合わせて食べるものは人それぞれ、盛り付け方もどう彩るかで作品は変わってきます。

オリビエさんは日々の料理の中で、食材を組み合わせて調理することで生まれる「おいしい」と感じる瞬間や「もっとこうした方がおいしくなる」という発見を楽しみ、心も身体も満たされる料理を作り続けています。「食」は人を良くすると書く様に、私やあなたも一つの作品なんだよと言われているよう。

ー料理以外の器や調理道具にも趣がありますね。

オリビエ:外へ出れば便利なもので溢れているけど、ここにあるもので十分なんだ。ものを選ぶ時に大事にしているのは、自分が好きかどうか。あとは、ストーリーを大切にしています。今揃っているものは気に入って選んだものばかりだから、傷ついたり壊れたりしても直して、長年使っていますね。

パテドカンパーニュ

さらに、オリビエさんは商品パッケージやロゴ、ホームページ、youtube配信やSNS投稿にかかる画像や動画の編集まで全て一人で手掛けているというので驚きです。どれもオリビエさんの遊び心が感じられるデザインばかり。

オリビエ:東京で勤めていた頃にデザインの仕事にも携わっていたから、自分でできることはなんでもやりますよ。オリジナルを生み出すのは楽しいじゃん!

ことばの文化への好奇心が導いた移住への決意

ーオリビエさんが日本に来たきっかけは?

オリビエ:もともと、私の父は画家で母は彫刻家でね。小さい頃からパリ中にある美術館に連れて行ってもらいました。

日本に興味を持ち始めたのは中学生の頃、両親と行った展示会で日本語の筆字に見惚れたんです。日本語の読み方や意味を知りたくなって、高校では日本語を勉強するためにスクールに毎週通っていました。

高校卒業後はパリの大学で日本語を専攻して、1年生の時に初めて日本に行ったんです。日本がさらに好きになったね。パリに戻ってからも日本の歴史や言語の授業を受けていたけど、つまらなくなっちゃって。実用的な日本語にもっと触れたくて、23歳の時に日本への移住を決めて、東京で暮らし始めました。

ー東京での暮らしを経て、札幌ではどのタイミングで住み始めたんでしょう?

オリビエ:東京では色んな仕事を経験しましたね。某有名ブランドがまだ小さいお店だった時にバイヤーとして海外へ買い付けに行ったり、ブライダルの会社やウェブサイト制作などいろいろ。

東京で暮らしていた頃、札幌の人と知り合って、初めて夏の北海道を訪れました。東京ほど暑くなくて、過ごしやすい気候だったので、札幌に住みたいなぁと漠然と思っていて。それから違う季節にも何度か北海道へ行って、札幌への移住を決めました。

札幌は、都会でありながら自然が身近に感じられるところが好きです。街を歩いていると、道端にくるみが落ちていて、「こんなところにあったんだ」って発見が楽しかったりする。ちょっと車を走らせれば自然と触れ合えるし、食も豊かなので札幌は好きですね。

「脳の窓」から紐解く、暮らしを豊かにするアートとは

最後に、オリビエさんにとってアートとは?と尋ねるとこんな言葉が返ってきました。

私にとってのアートは、「脳の窓」。

んん?どういう意味だろうとしばらく頭を悩ませました。
筆者の憶測ですが「脳の窓」は「心を映すもの」と言えるのでは。人間の脳が心を生み、窓は内と外を繋ぎます。窓が外の光や風景を映すように、アートは心を映す窓となって、人と人の心を繋いでいくということなのかもしれません。

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writing|Haruka Asari
instagram|@nilamekko
edit|ナベ子(Sitakke編集部)

<取材協力>
円山の台所

〒060-0063
札幌市中央区円山西町6-5-17
Instagram: @maruyama_no_daidokoro

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※掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。2022年1月現在、新型コロナウイルス感染症による感染拡大を防止するため、不要不急の外出自粛の推奨など、様々な対策や注意喚起が行われています。

このような状況ではありますが、みなさまの”コロナ疲れ"の息抜きに「いつか行きたい」お店選びの参考として楽しんで頂きたい、そして、いま厳しい状況下にある飲食店や観光地を応援したいという想いを込めて、Sitakke(したっけ)では「おでかけ」情報を発信しています。

内容の変更が発生する場合がありますので、最新の情報は各店舗・各施設にお問い合わせください。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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