2021.12.22

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【お悩みQ&A】職場で怒られたりすると、すぐ泣きそうになります。「メンタルの強い人間」になるにはどうすればいい?

は~い皆さん、ごきげんよう!お悩み相談コラム担当・満島てる子です。札幌でちょこまかと何かをしている“ 女装子 ”のゲイで~す!

あ~ん、師走って感じ……。このとんでもなく忙しい時期、皆さんはいかがお過ごしかしら。「いつもと変わらずぼちぼち」「え?別に暇」って方もいたりするのかもしれませんが、仕事やらなんやらに追われて白目剥きそうになってる人、いつもよりも多い気がするわ。あたし自身、毎日死亡フラグと闘い続ける生活を送っています(ぐえぇ)。

「働かざる者食うべからず」なんてことわざもあるけれど、割とあたしは「命あっての物種」派。生きてると、目の前の大事なことに馬力出さなきゃいけない場面って時々あったりしますが、でも「これやらなきゃ」「あれやらなきゃ」って頑張った挙句、仕事とかに人生つぶされかけちゃ意味がないと思うの。この12月は割と「ここで踏ん張らないでどうすんのよ!」なんて事案の方が多くなってきそうだけれど……。でも皆さん、無理はし過ぎず、からだもこころもどうか健やかにいてくださいね。

さて、そんな季節だからなのか、今回は仕事に悩む方からの投稿が。なんだかいろんな事情が絡み合ってるみたい。見てみましょう。

今回ご紹介する「お悩み」

新卒で働き始めて半年経ったのですが、職場はクレームの多い部署で、怒鳴られたり、脅されたりする毎日です。その度に声が震えてしまったり、泣きそうになってしまいます。同期と比べると、自分の弱さを感じてまた泣きそうになります。

また、仕事の内容もお客様の命を左右する、責任の大きなもので、帰宅した後も心の休まらない日々です。辞職も考えましたが、就職が決まったときに喜んでくれた母の顔が忘れられず、踏みとどまっています。どうやったらメンタルの強い人間になれるでしょうか。(北海道・S市・20~24歳)

なんとまぁ。これはまた、とってもゆゆしきお悩みだわ。苦しみ、迷い、覚悟……そういった心の動きの全てがひしひしと伝わってくるというか。

なんにせよ、まずは投稿ありがとう!お仕事の合間だったりのひとときに、このコラムを読んでくれてたりするのかしらと想像すると、あたしもこうして文章を書く“仕事”をやっていることが誰かの生活につながっているんだなと思えるし、そこに自分の果たすべき責任があるんだなと改めて気持ちが引き締まります。

いやぁ、にしても毎日なんやかんやで働いているとさ、ふとした瞬間に「あぁ仕事って想像以上に“感情”を使うものだな」って考えさせられる瞬間があるんだけれど、皆さんはどうかしら。業種や職種による差はきっとあるでしょうが、物やサービス、その場の時間に想いを込めて誰かに届けたり、はたまた場面によっては誰かの想いを受け止める側にまわったり、そんな情感的な部分でのやりとりが労働というものの根っこにある気がするんです。

それがゆえに、相談文の言葉を使うと「メンタル」が大事になってくる場面って、働いているときっと多々あると思うんだけれど……(「自分のメンタルは自分で保て!」なんて、どっかの意識高い系ビジネス書に載ってそうな文言よね)。でも大事だからこそ、そのメンタルが変に“消費”されちゃって疲弊しちゃう時って、あったりしますよね。
あたしは正直なところ、割とあります。

ましてや投稿者さんのように、人の声をちゃんと聴き、相手と深くかかわる仕事だったりすると、その性質からして自分のこころを一旦棚上げにしなきゃいけない場面がどうしても出てきますし、その負荷は相当なものなんじゃないかしら。気持ちがどれだけ荒れていても明るく振る舞わなきゃいけなかったり、相手から負のエネルギーをぶつけられることに耐えなきゃいけなかったり……。

最近こういったメンタル的な側面が大きい仕事は、肉体労働・頭脳労働とは別に「感情労働」 (※1)と呼ばれていて、そこに携わる人たちに合わせた適切なサポートが必要であることも、その名前と一緒にだんだんと知られるようになってきていますが、でもそんな流れはまだメジャーとは言えません。

しかも、こころって見えづらいものだし、そのせいで仕事で抱えた傷があったとしても、きっと外に出しにくくなっちゃうもの。おそらく投稿者さんにとっては、誰かと悩みを共有するというのも難しかったんじゃないかなぁ。ご家庭の事情もあるだろうしね。きっと相当大変だったろうと想像しながら、今回の相談文、読ませてもらっていました。

あたしなりのAnswer

では本題というか、「どうやったらメンタルの強い人間になれるのか」という質問を今回は寄せてもらっているわけで、そこにあたしなりの返答をって話なんだけれど……。それにあたって、あたしの好きな漫画『モブサイコ100』(小学館/立川譲)からこの一言を、最初に投稿者さんに贈りたいと思います。

「嫌な時はなぁ!逃げたっていいんだよ!」――(第6巻72ページより)

あのね。お豆腐メンタル選手権優勝者(なんじゃそりゃ)としてぶっちゃけて言ってしまうと、まずこころという存在自体、初期設定として弱くてもろいもので、多分「強くなる」っていうのに向いていない構造をしてるんじゃないかと思うの。

イライラしたらすぐ破裂しちゃうし、悲しいことがあったら限界までしぼむし。ましてや他人からの負の感情になんてさらされたら、そんなもん場合によっては秒で緊急治療室行き。(時々「心臓に毛どころか角生えてない?」って人いるけど、マジであんなのはレアキャラよね。)

そんな壊れやすい存在に、時には鋼鉄の甲冑だったりミスリルの盾だったりを装備させて、なんとかこんとかこの社会という、時にやばめのボスキャラともエンカウントしちゃうような厳しい世界を生き抜こうと、人それぞれ頑張っている気がするのよね(もちろん、あたしも投稿者さんもそんな頑張っているうちのひとり。あたしはすぐ棺桶モードになりがちだけど……)。だからメンタルの「強化」という観点でいけば、装備を増やす(その装備って、例えば仕事に関する知識とかノウハウを身に着けたり、仕事用のキャラクターを演じることに慣れたりってことだと思うんだけれど)ってのが手っ取り早いのかもしれない。

だけど……だけどね。どれだけ外側を強化したって、その中にいるこころが疲れてしまっていたり泣き叫んでいるのなら、そんな装備品も付けてる意味きっと無くしちゃうと思うし、むしろそんな時はメンタルの強化ではなく「ケア」が必要だと思うんです。

無数の働き方がある中で(とはいえ、じゃあ全部仕事として平等で公平なのかというと、そうはいかない場面も訪れてしまう歯がゆい社会なんだけれど)、それぞれのタイミングややりたいことといったいろんな事情が重なって、あたしはあたしなりに、投稿者さんは投稿者さんなりに、今の職と出会ってそれをなりわいとしているのは、なんだか奇跡的なこと。あたしも投稿者さん同様、オープン直前の準備中の店内をキラキラとした笑顔で見渡す母の喜ぶ顔が忘れられなくて、「この奇跡を大事にしていこう」と、今の仕事を頑張る決意をしたことをよく思い出します。

でも、今の状況がどれだけミラクルでありがたいことだったとしても、その結果おのれがつぶれてしまったとしたら、それは悲劇以外の何物でもないはず。だからこそ投稿者さんには、お客様や家族の声だったり気持ちだったりとあえて少し距離を取って、自分のこころの「クレーム」というか、正直な気持ちと向き合い、自分で自分をそのまま抱きしめてあげてほしいんです。同期となんて比べなくていいから、弱さももろさもそのままに。

身の振り方というか、仕事との向き合い方は、きっとその後決めても遅くないと思います。「やっぱり続けるの辛い!」と思ったなら、ゆるやかにそこから離れ、別の未来を探し始めるのもいい(そう、逃げたっていいのよ)。「ここで頑張るんだ!」と腹をくくるとなれば、自分を強化して様々なシーンに立ち向かっていく必要も出てくるでしょうから、装備を増やすべく、職場の周りの人たちにアドバイスを求めてみてもいいかもしれない。

ただそれは、まず投稿者さんが自身の気持ちを丸ごと受け止めてあげてから。冒頭の話じゃないけれど、強くなんて今はなろうとしなくていいから、どうか自分のことを大切にして、人生が健やかになるよう意識してみてください。その過程を経れば、ちょっと開けたところから、今後について考えられるようになるはず。

とげとげしいシーンに出くわすのも割としょっちゅうあるこの世の中だけど、投稿者さんが少しでも安らぎを手に入れられるよう、あたしもこころから願っています!

ま・と・め

ということで、今回はこの季節らしさあふれる「仕事」という話題について、あたし自身様々な気持ちを反芻しながらお話しさせていただきました。

にしても「師が馳せる月」を縮めて師走(しわす)になったっていうのに思わず「わかる!」と叫んでしまいそうになるぐらい、年末ってなんやかんやが盛りだくさんね。
あたし今年も「やばいあれ忘れてた!」「これってどうなってたっけ」とか大焦りしつつ、とはいえ店でお客さんと一緒に「年忘れよ~!」って毎夜飲んでたら、結局そのまま大晦日迎えちゃったりしてそう。怖いわ……。

読者の方々にとってはどうぞ、素敵かつ有意義な年末でありますように。笑
ではではみなさん、Sitakkeね~!

※1「感情労働」=初出はホックシールド(2000)『管理される心―感情が商品になるとき』世界思想社(石川他訳)

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「連載コラム・てる子のお悩み相談ルーム」
文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:なべ子(Sitakke編集部)
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満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。) 2021年7月よりWEBマガジン「SItakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。

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Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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