2021.12.17
深める「ぷしゅっ!」タブをひけば炭酸はじけ、一年の疲れがはじけ飛ぶ…間もなく訪れるクリスマス、そして年の瀬にふさわしいビールが飲みたい!そんな一杯を求めてやってきたのは、札幌市中央区「BEER INN 麦酒停」。42年の歴史を持つビアバーです。
扱うビールは、300種類以上!アメリカやエストニア、ベルギーなど、世界各国の小規模な醸造所がこだわって作った、いわゆる「クラフトビール」がずらりと並びます。
じつはここ、ビアバーの世界では知らない人はいないほどの有名人がいるのです!
サンタクロースそっくり(?)なおひげのフレッド・カフマンさん。カリフォルニア出身の68歳です。世界中を巡り、各地から集めたクラフトビールを広めたパイオニアとして知られています。
―それにしても立派なおひげですね。いつから伸ばしてますか?
カフマンさん)16歳くらいからかな。ひげがあるとビールが二度おいしく楽しめるよ。
世界中を飲み歩いた陽気なビール博士に、この時期のおすすめを聞きました。
カフマンさん)まず、名前に“ウインター”がつくビールだね。冬のビールは、身体を暖めるためにアルコール度数は高めで、常温に近い温度でゆっくり飲むと、味が良く出るのが多いよ。
いろいろなことがあったこの一年…年末の振り返りにはちょうど良さそうです。サンタクロースが描かれるなど、冬らしい見た目のラベルも見ているだけで気分が高まります!
左:CHAPEAU Winter gueuze(シャポー・ウインターグーズ)(ベルギー・Alc.5.6%)~口に含むと苦みがなく甘みを感じる。自然発酵による酸味が特徴的。
中:PIRLOT・Kempisch Vuur WINTER(ピルロット・ケンピッシュビュール ウインター)(ベルギー・Alc.9%)~ストロングスタイルな香りや色味。それに負けない味わいが楽しめる。
右:HUB・ABOMINABLE WINTER ALE(ハブ・アボミナブルウインターエール)(アメリカ・Alc.7.3%)~ホップ高めのスパイシーな柑橘風味に酔いしれる。
カフマンさんによると、冬仕様のビールは、のどごしを楽しむ夏と比べて、高い度数で香りや味そのものを楽しみやすいということです。
お酒を楽しむ機会が多い年末は、新たな味覚に出会うチャンスでもあるのです。
きっと飲み方にもこだわればさらにおいしくなるはず…!?初心者が自宅でもできる、最高の一杯のための、注ぎ方のコツについても質問してみました。
―自宅で飲むビールをワンランク上にするテクニックを教えてください。
カフマンさん)ハッハッハッハッ!ビールを知っているフリして、「このビールは〇回に分けて注ぐ…」とかやっても、逆に楽しくないよ。
全然だめ。変にこだわるべきじゃない。好きに飲めばいいよ。テクニックも、まあ、ないわけじゃないけど、私のくちからはそういう細かいこと、言いたくないね。それぞれが好きに飲むのが、いいでしょっ!
―そこをなんとか…。なにかありませんか?
え~あえていうなら…「こぼさないように、注ぐこと」くらいだね。
―…つまり、美味しく飲もうという気持ちが大切、ということでしょうか?
カフマンさん)そうそう。大切なのは、何をおいしいと感じるか。私はビールのソムリエだから、あなたが好きな味が分かれば「ふだんアレを飲んでいるなら、いきなりコレは難しいから、ちょっとおいしいラガーを試してみようか」とか言える。
苦さがダメならフルーティーなのだっていい。いきなりアルコール13度のビールを飲んでもおいしくないでしょ。ちょっと度数が高いとか、ちょっとコクがあるのを試していくと、次の段階にいけるのよ。
カフマンさん)いつもと同じビールを飲まないことが大事。試してみて。
ひげについた琥珀色のビールをぺろり。
18歳、ヒッチハイクで初めて北海道を訪れたカフマンさん。日本で暮らす憧れを持ちながら、蒸し暑くて人の多い東京は嫌、英語の先生にもなりたくない。
当時、唯一できたという「栓抜き」をきっかけに札幌でビアバーを開くことに。
カフマンさん)やりたいことは、やる。やりたくないことは、やらない。私の人生それだけよ!
いつしかクラフトビールのパイオニアとなったビール博士の人生は、気持ちの切り替えの連続で―。
カフマンさん)失敗もたくさんあったよ。面白そうだと思って輸入した犬用ビールは大失敗だったし。当時斬新だった外国人向けバーは15年ぐらいやったけど、時代も変わって、もういいかなと思ってやめた。“しっかりやるとき”がわかればいい。無理に続けることはない。
今はさ、「クラフトビールのパイオニア」なんて呼ばれてるけど、やりたいことやってただけ、たまたまだと思うよ。
チャレンジしつつも、こだわりは持つ。まるでビールの楽しみ方のようです。
幅広い年齢層でにぎわうビアバーで博士の未来について聞きました。
カフマンさん)今のスタンスを守れたらよくて、やり残したことはあまりないかな。美味しいビールを仕入れるのは別だけどね。
―逆に、やりたくないことは?
カフマンさん)店にカラオケ入れたら儲かることもあるでしょ?儲けるために、店にカラオケ入れるお店が、一時期、続出したのよ。でも絶対しない。(店の雰囲気を壊す)カラオケを入れるくらいなら、店が潰れてもいい。昔から絶対いやだ!
あっ、でもちょっと待ってて、そういえば、一度だけカラオケを入れたんだよ。
カフマンさんがお店の奥から持ってきたのは…
来たる2022年、ちょっとした冒険心をきっかけに、みなさまも素敵な一杯に巡り合えますように。(終)
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BEER INN 麦酒停
住所:札幌市中央区南9条西5丁目421
営業時間:午後7時~翌午前3時
定休日:なし
フレッド・カフマンさんの出勤は金・土が中心
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文:引退D
企画・編集:なべ子(Sitakke編集部)
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