十勝は小豆の一大産地。肥よくな大地で育まれた小豆から作るあんは、風味豊かで、十勝はもちろん、全国の和洋菓子店などで愛されています。
さて、このあんが今、コロナ禍で需要が減っています。お膝元の十勝からその魅力を見つめ直し、おいしいあんをもっと楽しみませんか?
あっぱれ、十勝のあん ―。
農家や菓子店の皆さん、そして十勝っ子が愛してやまない「あん」に贈る、応援企画です。
「十勝産小豆、使っています―」。あんのおいしさを約束する合言葉のように、全国で耳にするフレーズです。身近すぎてその偉大さに気付いていない十勝の皆さん、まずは小豆についておさらいしましょう。
和菓子づくりに不可欠な小豆はかつて、和菓子文化が根付く本州でも盛んに栽培されていた。しかし、輪作体系が必要な小豆は広大な土地が必要で、本州では次第に収益がより上がる作物に変わっていった。一方、流通が発達するにつれ、品質のよい十勝の小豆を全国に届けることが可能に。地元産に頼る必要がなくなった本州の和菓子屋をはじめ、日本各地で親しまれるようになった。
現在は近畿・中国、東北地方などでも作付けされているが、例年全国の収穫量の9割以上が北海道産、6割以上が十勝産だ。十勝の小豆が日本の「あん」を支えている。
昔は全国の町ごとに「あんこ屋」があり、地元の小豆を使った生あんが流通していました
<左>大納言
大粒で煮崩れしにくい。甘納豆、鹿の子(かのこ)など粒の形を保った製品に使われる。
品種例:とよみ大納言、アカネダイナゴン
<中央>普通小豆
大納言以外の普通品種。あんや菓子の材料として使われる。
品種例:エリモショウズ、きたろまん
<右>白小豆
黄白色をした小豆。生産量が少ない希少種。ようかんや鹿の子などに使用。
品種例:きたほたる
色や香り、味が高く評価されている十勝の小豆。おいしさのヒミツはこの3つ。
(1)水はけがよい火山灰の土壌
豆類は、水はけや日当たりのよい場所を好む。
(2)秋の天候が安定。日中の寒暖差が大きい
台風や秋雨などが続く本州に比べ、爽やかな青天が続く十勝の秋。種子が成熟する「登熟(とうじゅく)」期間が長くなり、風味豊かな小豆が実る。
※小豆をはじめ、十勝の作物がおいしくなる秘訣(ひけつ)です
(3)輪作体系が整っている
小豆は連作障害を起こしやすい作物。数年間のサイクルで違う性質の作物を植える、長期の輪作が必須。広大な土地を誇る十勝は、小麦やてん菜、ジャガイモなどを栽培し、適正な輪作体系ができている。
※何より農家の皆さんの努力の賜物(たまもの)です!
【十勝の小豆栽培の流れ】
・5月 種まき
・7月中旬~ 開花下部から上に向かって順次、黄色い花が咲く。花が咲いた後、莢(さや)を付け始める
・9月下旬~10月中旬 収穫
菓子の材料として全国で重宝されている十勝の小豆だが、コロナ禍で土産や贈答品需要が減少し、あんの消費が減っている。道内産小豆の消費は例年なら95万俵(※1俵は60kg)だが、昨年は65万俵。
豆の国十勝協同組合の梶原さんは、「消費が続く限りは小豆の栽培はなくならない。ぜひおいしい小豆を食べてほしい。いつものようにお届けできる日が来るのを待ち望んでいます」と話してくれた。今年は小豆の出来も上々らしい。十勝の皆さん、本日のおやつはあん菓子で!
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取材協力・資料参照
豆の国十勝協同組合(帯広市西21条南1丁目4、電話:0155-37-2777)、十勝総合振興局、農林水産省HP
※フリーマガジン「Chai」2021年11月号より。
※撮影(小豆の種類の写真)/鎌田廉平。写真の無断転用は禁じます。
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